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ひとりの少女の死より、時は数時間程遡って。
彼女の在籍するクラスの生徒を乗せて、バスは走っていた。

二泊三日、修学旅行に向かうバスの中。皆がそれぞれに盛り上がり、いつにも増してヒートアップした3年4組の喧騒。ふいに、制服を着たバスガイドがひらりと右手を上げ、最後尾の中心座席に座る、中年ほどの男性に視線を向ける。
始まりの、合図――バスガイドのとったその行動が、合図だと聞いていた。
岩本雄一郎(埼玉県丹羽中学校3年4組副担任教師)は最後尾の座席からその合図を見て、小さく頷く。バスガイドが上げた右手でピースサインをつくり、岩本は席を立った。

「どーしたんだよ、イワちゃん」
突然立ち上がった岩本に、少し長めの前髪をばさっと揺らして
永田泰(男子11番)が声を掛ける。そこから岩本を挟んだ反対側の座席では、泰と仲の良い畑野義基(男子12番)、ちょっとトロくてよく不良連中にイジメられている松岡慎也(男子15番)が二人揃って手の平に乗るサイズのゲームをピコピコと鳴らしている。互いのゲーム機は一本のケーブルで繋がれていた。対戦でもしているのだろうか。
「ああ、ちょっと気分が悪くてな。前に移るよ」
岩本が応えると、義基がゲームから顔を上げた。心配そうに眉を寄せて、義基は言う。
「イワちゃん、大丈夫? 薬あげよっか?」
「否、大丈夫だよ。大したもんじゃない」
少し首を振って岩本は言い、後髪を引かれる思いで席を離れる。もう、彼等はこんな風に盛り上がってゲームをする事もできなくなってしまうのだ。

泰たちのすぐ前の座席では、
川合康平(男子5番)がちょっと困った様子で肩をすくめている。通り掛かった岩本を見ると、康平は「イワちゃーん、聞いてよ」と泣き付くような声を上げた。
「どした、川合」
「それがさ、大輝のヤツがまた変な事言いだしちゃってんだよ」
隣の座席で何やらぶつぶつ繰り返している(好きです、ダメだ普通過ぎ、愛してる、あーちょっと重いかな、ずっと好きだったんだ、否先週からだけどね、といった具合だ)
吉川大輝(男子19番)にちらちらと視線を向けながら、康平は言った。
「吉川、なんだ。またオンナか?」
すぐに予想がつき、岩本は呆れ混じりに言う。それで、大輝が素早く顔を上げた。その目は異常にきらきらと輝いている。生きてて楽しい? と問えば「楽しい!」と即答しそうな程に。
「イワちゃん! 俺、修学旅行でぜってー告る! 高橋奈央チャン、マジ惚れた!」
大輝は息を弾ませて宣言する。――吉川、お前って奴は。二週間前他のクラスの女にフラれたばっかじゃなかったのか? 岩本は苦笑して「健闘を祈るよ」とだけ言った。大輝の惚れっぽさはきっと、これから起こる事にも揺るがされる事は無いのだろうと思いながら。

それから――元気の良い笑い声が、聞こえた。ちょっと騒がしいけれど、明るくさっぱりとした性格の
福原満奈実(女子14番)のものだ。隣に座る佐々木弘志(男子7番)の話に大ウケしているらしい。その反対側には、お調子者でムードメーカーの三木典正(男子16番)が色々と喋っている。どうやら話し相手は、隣に座るかなり大人しい感じの渡辺佑子(女子19番)のようだ。
佑子は満奈実ととても仲が良いのだが、彼女とは全く逆で騒ぐのが苦手で引っ込み思案な女の子だった。今も俯きながら、慣れない男相手のお喋りに顔を真っ赤に染め、精一杯相槌をうっている。
その様子に、岩本は少し眉を持ち上げる。
確か、座席順を決める時は佑子と満奈実が隣、弘志と典正が隣になっていた筈だ。
ふと、典正が何か佑子の笑いのツボを刺激したのだろうか、緊張していた佑子の表情がふっと緩み、佑子は真っ赤になりながらもくすくすと綺麗な声を零して笑う。それで、典正の顔にほっと安堵したような表情が広がり、二人は穏やかに、とても楽しそうに笑い合った。
――なるほど、そういう訳か。
微笑ましい二人の姿に、岩本は何となくそれを察した。しかし――同時に、強い罪悪感がちらっと胸の辺りを掠めたのだが。

二人仲良く読書をしている男子生徒――小柄で女の子のような顔立ちの
鈴村正義(男子8番)と、クラス一の長身で大人っぽく、学級委員も務めている安池文彦(男子18番)の間を通り過ぎ(安池、お前はしっかりしてるけどな。あんまり無理し過ぎるもんじゃないぞ)、もう二、三歩ほど足を進めると、岩本はちょっと首を傾げ、おや、と思った。

少し無口な感じでクラスにもあまり馴染めていない
黒田明人(男子6番)が、いつものように押し黙って窓の外を眺め――そう、そこまではいつも通りなのだ。
しかしその隣に座る彼女が、いつも通りでは無かった。しょっちゅう無茶苦茶な事をして、いつも自分を困らせてくれている不良娘(というのも古臭いが)の
植野奈月(女子2番)も、明人と同じ空気で押し黙り、どこか遠い目で窓の外を見ている。奈月は普段からお喋りで明るく、その可愛らしい唇は大抵、人懐っこい笑みを浮かべている。それが今は唇をきゅっと引き締めて、強張った表情を浮かべているのだ。滅多に拝めない奈月の姿に、岩本は驚きを通り越して有り難みを感じた。
「…イワちゃん」
ふいに、奈月がぽつりと口を開く。その唇がふっと緩み、奈月は潤んだ瞳を上目遣いに岩本を見た。その瞳はきゅるるーんと愛らしい煌めきを放っている。――植野なっちゃん。お前はその瞳で何人の男どもを騙してきたんだ?
「黒田チャンがなつきのことイジメるー! 最悪!」
唐突な奈月の言葉に、岩本は呆れ返った。何を言い出すかと思えば――植野。お前は幼稚園児か。
「別にイジメてねーだろ」
相変わらず窓の外を眺めたまま、明人がぽつりと呟く。奈月はその言葉に、ばっと明人に向き直ってまくしたてた。
「充分イジメ! 何言ってもシカトするし! 第一あたしの前で黙りこくってるなんて犯罪じゃん!」
「お前がどうでもいい事ばっか言ってるからだろ。犯罪だったらお前の方が前科者の癖して」
明人は奈月に呆れ混じりの視線を突き刺し、さらりと言葉を返していく。御名答だ。奈月は近場の交番と警察署の生活安全課には、しっかりと顔を覚えられてしまっている。場合によっては他の課すら絡んできそうだ。
「ほらほらぁ! 今の発言イジメっしょ? 黒田さいてーマジひどいー女の子に向かってなんてことゆーのぉ?」
奈月が歌うようにまくし立てるが、明人の方は最早相手にする気も無いようだ。奈月から視線を外し、再び窓の外を眺めている。奈月は唇を尖らせて呟いた。
「あーあ、つまんねぇの。とっとと駅着かないかなー。なっちゃん、早く大仏サンに飛び蹴り入れたいんだけど♪」
その言葉に、岩本は思わず吹き出し、それから少し寂しくなった。確かに、奈月はこれまで教師達の予想のつかないようなとんでもない事をやらかしては面白がり、丹羽中学校にありとあらゆる伝説を造ってきたが――しかし、そんな事だってもう、実現する訳が無いのだ。
「無邪気な顔して怖い事言うもんじゃないよ、植野。旅行中に何かやらかしたら、今度こそ自宅に強制送還だからな。俺でも庇いきれん」
「何、今まで庇ってくれてたのー? ありがとイワちゃん、愛してる★」
奈月は天使のように無垢な笑顔を広げ、可愛らしい唇からちらっと舌を出してみせる。岩本はやれやれと溜め息を吐いて奈月の頭を小突き、それから明人に視線を向けた。
「はいはい、お気持ちだけいただきます。黒田、お前はいいかげん友達作んなさい」
「お構いなく。俺は俺でやってるんで」
明人は面倒そうにそれだけ応え、また窓の外に視線を向けた。

その二人から離れて前に進むと、一段と団体様な集団(主流派、とでも言うのだろうか)が陣取っていた。
小柄だが鈴村正義とは違ってそれなりに少年らしさのある
荒川幸太(男子1番)、ちょっと口が悪いけれど根は良い奴の大野達貴(男子3番)、男子バスケ部のエースで運動神経の良い土屋雅弘(男子10番)、熱血漢で不良連中とはちょっと折り合いの悪い宮田雄祐(男子17番)
そんな男子陣に続いて、学級委員長の
横井理香子(女子18番)を中心とした女子のグループ(優しくて“いいひと”の麻生加奈恵(女子1番)、ちょっと生真面目で今も片手にしっかりと単語帳を握っている志田愛子(女子8番)、明るく誰にでも人当たりのよいクラスの人気者、高橋奈央(女子9番)――吉川大輝が惚れ込むのも無理はないだろう)の8名がくっつき、トランプをしていた。
「あ、イワちゃん! コレ食う?」
通り掛かった岩本に、荒川幸太がポッキーの箱を差し出す。岩本はありがとう、と笑って一本貰い、それから女子連中に何か欠けているのに気付き、辺りを見渡す。
「なんだ、水谷はハバか」
岩本が呟いた言葉に「ハバ…って死語だろイワちゃん」と土屋雅弘が突っ込む。それから、高橋奈央が笑いながら応えた。
「違うよぉ? 桃ちゃんはベストフレンドとお喋り中なのです」
「ベストフレンドっていうのもある意味死語じゃん、奈央」
横井理香子が苦笑混じりに呟き――その団体連中の少し前の座席に、彼女は居た。

理香子たちのグループとも付き合いがある(というか妹分で可愛がられている)
水谷桃実(女子16番)が、いつもと同じ耳の上で結った二つ結びの髪を揺らして、前の座席の誰かと話をしている。誰か、というのは勿論、桃実の“ベストフレンド”(死語の嵐だ)である穂積理紗(女子15番)なのだろう。
理紗は二年の二学期に大阪から引っ越してきて、未だにその口調には関西訛りが残っている。そして、その容姿――これがまた特徴的だった。スタイルが良く、整った顔立ちはクラスでも一、二を競うほどの美貌なのだが、彼女はとにかく目付きが悪く、髪も目が覚める程明るい金色に染めている。お陰で大抵のクラスメートからは“西から来た浪花のヤンキー”といった見解をされているのだ。
ちょっと幼い感じの桃実と、不良娘のレッテルを貼られた理紗。何故この二人がこれほどまでに仲良しなのか、それは3年4組の大きな謎だったのだが――桃実と喋っている時の理紗は表情も柔らかく、桃実のボケに理紗が絶妙なタイミングでツッコミを入れるその姿は微笑ましくもあったので、周りとしても温かく見守っている訳である。

そして――団体連中の間を通り抜けると、岩本は足を止めた。というか、止められたのだ。
通路に付けられた補助席のシートを勝手に開き、そのシートに
古宮敬一(男子14番)が行儀悪く、ずるずると座り込んでいる。敬一のリーゼント頭(今時珍しいな、コレは)のすぐ横、その肩に寄り掛かって甲高い笑い声を上げているのは後藤沙織(女子6番)だろうか。
こちらもちょっと奇抜な感じのヘアスタイルをしている。ちりちりにウェーブのかかった赤茶色の髪を高く結い上げて散らし、前髪とサイドに少し下ろした髪だけが唯一ストレートなのだ。それぞれ3年4組男女代表の“ちょっと変わったアタマ”同士、敬一と沙織は付き合っているらしい。
「古宮、ちょっと通してくれないか」
岩本が声を掛けると、敬一の頭がちらりと振り返った。
「あぁ? 仕方ねぇな、イワちゃんの頼みだったら通してやんべ」
敬一の方はちょっと苦笑し、それから了承してシートを片付けてくれたのだが――すぐに、甲高い声が聞こえる。
「ひっどぉい! イワちゃん、さおりとけーいっちゃんの仲を引き裂こーとしてるんだぁ!」
沙織の悲鳴に、周りに居た同じような不良連中(遊び人でナンパ師の
岩田正幸(男子2番)、イジメと嫌がらせが生き甲斐のような藤川猛(男子13番)、そして沙織や植野奈月あたりと仲の良い迫田美古都(女子7番)だ)が爆笑し、一緒になって騒ぎ出す。
「うっわー、イワちゃん悪ぃんだー」
猛は手を叩いて騒ぎ、美古都が「あたしの沙織イジメたらイワちゃんでも許さねぇよ?」と冗談混じりの非難をする中、正幸がカラーリングのし過ぎで幾分ぱさついた金髪を揺らして、岩本の肩にぽんと手を置いた。
「イワちゃん、ご苦労さーん。俺とイワイワコンビ、組む?」
正幸の心遣い(確かに、ここ一帯は最早中学三年生というより幼稚園児の集まりのようだ)に岩本は苦笑し、「そうだな、また時間あったら組んでみるか」と応える。
「ホンットご苦労さんやて、コイツらごっつうっさいもん」
ふと沙織の隣から、あの関西訛りの残る声が聞こえる。正幸のそれとは違い、手入れをきちんとした艶のある金髪の穂積理紗が、不良連中の喧騒にすっかり呆れ果てた顔をして呟いていた。その丁度上に、後ろの座席から顔を覗かせている水谷桃実の二つ結びの髪がちらちらと揺れている。
「いいじゃん、楽しそうだよみんな」
桃実が幾分のほほんとした感じで言う。理紗はちょっと困ったような顔をして、未だに騒ぎ続ける沙織の方にちらりと非難めいた視線を突き刺した。
「そーでもないわ、お陰で全然寝れへんし」
「穂積チャン、俺が子守歌歌ってあげよっか?」
正幸が理紗の座席の方にひょこっと顔を出し、いつものように軽い口調で言ってみせる。理紗がそれを苦笑混じりにあしらい、続いて桃実の方も「マサっち、いいかげん落ち着きなよー」と正幸をおちょくって遊んでいる。
――穂積、水谷。お前らは本当に仲が良いな。岩田、お前は水谷の言う通りだぞ。いいかげん、一人のオンナに落ち着きなさいや。

それからもう少し進むと、理紗たちのすぐ前で二人の女子生徒がお喋りをしている。否、お喋り――と言うよりは、一人が長々と喋り、もう一人はその話についていけない様子で目を丸くしていた。
アニメやゲームが好きで、今もその話題を楽しそうに喋っている
東城由里子(女子11番)と、彼女に相槌をうちながらも「え? うん、あ…」等と戸惑った様子の長谷川美歩(女子12番)だ。
こちらはまあ、理紗たちと同じくちょっと意外な組み合わせだ。地味な感じの由里子と、幾分色っぽい感じの顔立ちで、歩く女生徒百科事典岩田正幸曰く“オトナっぽくてそそられる感じ”の美歩。
まあ、互いにクラスでは浮いていたので(由里子の方はクラスメートとの関係が上手くいっていないらしく、普段は学校も休みがちだ。美歩の方は積極的にクラスメートと交流を持とうとせず“ひとりが好きな変わり者”のように思われているらしい)、言い方として適切かどうかは判らないが――あまりもの同士がくっついた、という感じなのだろうか。

最前列の辺りまで来ると、整った女受けの良いルックスで女生徒から人気の高い『丹羽中No.1(何だそれは、ホストクラブじゃあるまいし)』の
沖和哉(男子4番)と、今時っぽい感じで和哉ほどでは無いがそこそこ人気のある武井尚弥(男子9番)の“モテ系ペア”と、ちょっと性格に問題のある久米彩香(女子5番)のグループ(ごくごく普通にギャルっぽい浜野恵梨(女子13番)、彩香姫に仕える忠実な家臣――らしい森下亜貴(女子17番)の三人娘だ)がくっついて騒いでいる。
しかし――騒いでいる中、浜野恵梨の顔色が少し悪い。岩本は少し眉を持ち上げて、座席にうずくまっている恵梨に声を掛ける。
「浜野、どうした? 気分悪いか」
それで、幾分青ざめた恵梨の顔が少し上がった。
「……だい、じょぶ…でっす」
小さく片手を振って、恵梨はぎこちなく笑う。その様子に、久米彩香から熱い視線と凄まじい猛烈アタックを受けていた(どうやら狙われているらしい、流石丹羽中No.1)沖和哉がちらりと恵梨に視線を落とす。
「え…ごほん、浜野、大丈夫?」
和哉の視線が恵梨に向き、機嫌を損ねた彩香がすぐに甘ったるい声を上げた。
「えーりぃ。何仮病してんだよぅ」
「久米ぇ…勘弁してよ、コレが仮病に見えたらアンタの視力マジでヤバイよ?」
彩香にお門違いな非難を向けられ、恵梨は泣きそうな声で呟く。森下亜貴が困ったように「えりちゃんあやかちゃん、仲良くしてよぉ」と仲裁に入った。

ふと、彼女たちのすぐ後ろに座る
遠藤茉莉子(女子3番)に岩本は視線を向ける。その茉莉子の表情に、思わず岩本は一瞬固まってしまった。
茉莉子は穂積理紗と肩を並べる程の美人で、普段から愛想が良く、歩く女生徒百科事典岩田正幸曰く(引用二回目だ、岩田に感謝)“顔良し性格良しオーラ良し、究極の良いオンナ”だった訳だ。それが――今は普段の様子からはかけ離れた、理紗すらも迫力負けしてしまいそうな程に恐ろしく冷たく、鋭い視線を前方の座席に突き刺している。
「どした、遠藤?」
岩本が小さく声を掛けると、茉莉子はふっと我に返ったように前方から視線を動かした。そのまま、いつもと同じ穏やかで暖かい、感じの良い笑顔を浮かべて岩本に向き直る。
「何、イワちゃん。なんでもないけど?」
その笑顔に、岩本は返す言葉もなく「否、そうか」とだけ呟く。茉莉子が「変なの、イワちゃん」と肩を揺らして笑い、その肩に寄り掛かって眠っていた隣の
多村希(女子10番)が、うーん、と小さく声を漏らす。

そう――今ここに居る37人の生徒と、今頃きっと政府の連中(なんて言葉は口が裂けても表には出せないが)に迎えに来られているであろう1人の生徒のうち、“勝ち残った”一人以外は――確実に、死んでしまうのだ。これから。そして、自分はそれを見捨てる事になってしまう――岩本には、妻が居るのだ。政府に楯突いたとしてもそれは無駄な行動にしかならないし、体の弱い妻をひとり残して死ぬ訳にはいかない。だからこうして、生徒たちを見捨てる。
それで憎まれたとしても、仕方無い事なのだ。
岩本は深く溜め息を吐き、バスの入り口付近に置かれたやたらと大きな黒いトランクを開く。その中から姿を覗かせたいびつな酸素マスクに、岩本はそっと、手を伸ばした。




Now 38 students and 2 teachers remaining...




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